民泊の税金まとめ|所得区分・消費税・宿泊税・確定申告
訪日客の増加を背景に、自宅の空き部屋や空き家を使った民泊を始める人が増えています。ただ、民泊の税金は「家賃収入と同じ」でも「お店の売上と同じ」でもない独特の扱いで、国税庁がわざわざ専用の見解を公表しているほどです。さらに2025〜2027年にかけて宿泊税を課す自治体が全国で一気に増え、民泊も課税対象に含まれます。この記事では、民泊収入の所得区分から、経費・消費税・宿泊税・自宅を使う場合の落とし穴まで、国税庁など公的機関の一次情報をもとに整理します。
・自宅を使った民泊の所得は、国税庁の見解で原則「雑所得」。通常の家賃収入(不動産所得)とは扱いが違う
・宿泊料は消費税の課税対象(住宅の家賃は非課税だが、民泊はホテルと同じ扱い)
・宿泊税の対象地域が急拡大中。宿泊者から預かって納める実務が発生する
・自宅で始めると住宅ローン控除・固定資産税の軽減に影響することがある
前提|民泊には3つの制度がある
税金の話に入る前に、民泊の法律上の枠組みを押さえておきます。どの制度で運営するかによって、営業できる日数や、あとで説明する税金の論点が変わってくるためです[民泊制度ポータルサイト]。
| 制度 | 営業日数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 年間180日まで | 都道府県等への届出で始められる。自宅・空き家を使う個人の民泊はほとんどがこれ |
| 特区民泊 | 制限なし(2泊3日以上の滞在が条件) | 国家戦略特区の一部地域(大阪市など)のみ。自治体の認定が必要 |
| 旅館業法(簡易宿所) | 制限なし | 営業許可が必要。専用施設として本格的に営む形態 |
この記事では、いちばん多い「民泊新法の届出をして、自宅や空き家で運営する個人」を中心に解説します。
所得区分|民泊の収入は原則「雑所得」
「部屋を貸すのだから家賃と同じ不動産所得では?」と思いがちですが、違います。国税庁は民泊新法の施行に合わせて公表した文書で、自宅を使った住宅宿泊事業の所得は原則として「雑所得」と整理しています[国税庁(情報)]。
理由は、民泊が単なる部屋の貸付けではないからです。宿泊者の安全確保や衛生管理が義務付けられ、宿泊料には寝具のクリーニング代・水道光熱費・室内清掃費・観光案内などのサービスの対価が混ざっているため、通常の賃貸(不動産所得)とは性質が異なる、という整理です。
| ケース | 所得区分 |
|---|---|
| 自宅(の一部)で民泊新法の民泊を行う | 原則、雑所得 |
| 不動産賃貸業を営む人が、次の入居者が決まるまでの空室で一時的に民泊を行う | 不動産所得に含めて差し支えない |
| 専用の物件を複数運営するなど、事業として営んでいると認められる規模で行う | 事業所得となる場合がある |
雑所得のままでは青色申告の65万円控除は使えません。専用物件で本格的に営み事業所得となる規模を目指すのか、副業の範囲で続けるのかで、申告の姿がかなり変わります。通常の賃貸経営の税金との違いは不動産投資の税金で解説しています。
年末調整を受けている会社員は、給与以外の所得(収入−経費)が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。ただし住民税に20万円ルールはないため、市区町村への住民税の申告は必要です。詳しくは副業の確定申告ガイドをご覧ください。
収入と経費|按分がカギになる
収入は、宿泊料のほか、宿泊者から別途受け取る清掃料金なども含めた金額です。そこから必要経費を引いた残りが所得になります。民泊でよくある経費は次のとおりです。
| 経費の例 | ポイント |
|---|---|
| 民泊仲介サイトの手数料 | 全額経費にできる |
| 住宅宿泊管理業者への委託料・清掃の外注費 | 全額経費にできる |
| 宿泊者用の寝具・アメニティ・消耗品 | 宿泊者用に購入した分は全額経費にできる |
| 水道光熱費・通信費 | 自宅と共用なら按分が必要 |
| 家賃(賃貸物件で運営する場合)・固定資産税・保険料 | 民泊に使っている部分だけ按分して経費にできる |
| 建物・設備の減価償却費 | 民泊に使っている部分だけ按分して経費にできる |
自宅の一部を使う場合の按分は、国税庁の文書でも「民泊に使っている床面積の割合」と「年間の営業日数(利用日数)」で計算する方法が例示されています[国税庁(情報)]。「なんとなく半分」ではなく、根拠を持って区分するのが原則です。
年間の宿泊収入(清掃料込み)96万円。経費は、仲介サイト手数料14万円+清掃外注12万円+宿泊者用リネン・消耗品8万円+水道光熱費・保険などの按分分7万円=41万円。
→ 雑所得 = 96万円 − 41万円 = 55万円。20万円を超えるので、会社員でも確定申告が必要です。
消費税|「家賃は非課税」と混同しない
住宅の家賃は消費税が非課税ですが、これは契約で「人の居住用」と定められた貸付けの話。民泊の宿泊料はホテル・旅館の宿泊料と同じで、消費税の課税対象です[国税庁 No.6226]。
ただし課税対象であることと、実際に納税義務があることは別です。基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者のままでよく、副業規模の民泊なら納税が発生しないケースが大半です。宿泊者は個人旅行者が中心のため、適格請求書(インボイス)の登録も急いで必要になる場面は多くありませんが、出張利用が多く宿泊者側が経費精算するような運営なら検討の余地があります。登録して課税事業者になった場合の負担軽減(2割特例)は終了時期が決まっているので、インボイス2割特例の終了もあわせてご覧ください。
宿泊税|対象地域が急拡大中。ホストは「預かって納める」係になる
いま民泊の税金でいちばん動きが激しいのが宿泊税です。導入済み・導入予定の自治体は2026〜2027年にかけて約20から50前後へ一気に増える見込みで、多くの自治体で民泊(住宅宿泊事業)も課税対象です。主要地域の状況を整理します(1人1泊あたり・料金は税抜の宿泊料金で判定)。
| 地域 | 税額の目安 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 大阪府 | 5,000円未満は免税。以降200円・400円・500円の3段階 | 2025年9月〜(改定済み) |
| 京都市 | 200円〜1万円の5段階(10万円以上の宿泊は1万円)。全国最高水準 | 2026年3月〜(改定済み) |
| 北海道 | 道税として100円・200円・500円の3段階。札幌市など市町村分が上乗せされる地域あり | 2026年4月〜 |
| 東京都 | 現行は定額100円・200円(民泊は対象外)→ 宿泊料金の3%の定率制に変更され、民泊・簡易宿所も対象に(1万3,000円未満は免税) | 2027年4月〜 |
このほかにも導入・改定の動きが続いており、税額や免税点は自治体ごとに異なります。運営地域の最新情報は必ず自治体の公式ページで確認してください。
宿泊税は宿泊者が負担する税金で、ホストは宿泊者から預かって自治体に納める「特別徴収義務者」になります(申告・納入の手続が必要)。預かった宿泊税は売上(収入)ではなく預り金として区分し、宿泊料と分けて表示・管理するのが基本です。清掃料金を必須の料金として設定している場合、宿泊税の判定額に含める扱いが一般的な点にも注意してください。
自宅民泊の3つの落とし穴|「持ち家の優遇」が外れることがある
自宅の一部で民泊を始める場合、所得税・消費税・宿泊税とは別に、持ち家に効いている税の優遇が崩れないかを確認しておく必要があります。
① 住宅ローン控除:住宅ローン控除は「床面積の2分の1以上が自分の居住用」であることが要件のひとつ。民泊に使う割合が大きいと適用できなくなるおそれがあり、適用できる場合も控除は居住用部分に対応する分だけになります
② 固定資産税:住宅の敷地は「住宅用地の特例」で固定資産税が大きく軽減されています(小規模住宅用地は課税標準が6分の1)。居住部分が2分の1未満になると特例の全部または一部が外れ、税額が跳ね上がる可能性があります。仕組みは固定資産税の計算で解説しています
③ 売却時の3,000万円特別控除:マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は「居住用財産」が対象。民泊で事業に使っていた部分は対象から外れる可能性があります
また、専用物件を構えるなど事業として営んでいると判定される規模になると、都道府県の個人事業税(旅館業として税率5%が目安)の対象になる場合があります。規模を広げるときは、この記事の範囲を超える論点が増えるため、税理士への相談をおすすめします。
まとめ
よくある質問
自宅の空き部屋で民泊をした収入は、家賃と同じ不動産所得になりますか?
なりません。国税庁は、自宅を使った住宅宿泊事業(民泊新法の民泊)の所得を原則「雑所得」と整理しています。宿泊料に清掃やリネン、観光案内などサービスの対価が含まれ、単なる部屋の貸付けとは性質が違うためです。不動産賃貸業を営む人が空室で一時的に民泊を行った場合は、不動産所得に含めて差し支えないとされています。
会社員の副業で民泊の利益が年20万円以下なら、何もしなくてよいですか?
所得税の確定申告は不要ですが、住民税には20万円ルールがないため、市区町村への住民税の申告が必要です。また、医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする年は、20万円以下の民泊所得もあわせて申告する必要があります。
民泊の宿泊料に消費税はかかりますか?
かかります。住宅の家賃は非課税ですが、民泊の宿泊料はホテル・旅館と同じ課税対象です。ただし基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となり、実際の納税義務は生じません。副業規模の民泊では免税のままというケースが大半です。
宿泊者から受け取った宿泊税は収入に計上しますか?
計上しません。宿泊税は宿泊者が負担する税金で、ホストは特別徴収義務者として預かり、自治体へ申告・納入します。会計上は売上ではなく預り金として、宿泊料と分けて管理します。
自宅で民泊を始めると固定資産税が上がると聞きました。本当ですか?
可能性があります。住宅の敷地は住宅用地の特例で固定資産税が大きく軽減されていますが、民泊に使う割合が増えて居住部分が2分の1未満になると、特例の全部または一部が適用されなくなり、税額が大きく増えることがあります。住宅ローン控除の要件(床面積の2分の1以上が自己居住用)にも影響し得るため、自宅で始める前に確認が必要です。
参考リンク(出典)
本記事は次の公的資料をもとに作成しています(中立・一次情報)。
- 国税庁 住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)
- 国税庁 タックスアンサー No.6226 住宅の貸付け
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 民泊制度ポータルサイト(国土交通省・観光庁)
- 大阪府 宿泊税制度が変わります
- 北海道 北海道宿泊税
※本記事は一般的な情報提供であり、税務上の助言ではありません。宿泊税の税額・免税点や施行時期は自治体・年度により変わります。具体的な申告・届出のご判断は、税務署・自治体・税理士など専門家にご確認ください。







