法人のための税金ガイド

中小企業・一人法人オーナーが押さえておきたい節税・申告のポイントを解説します。

法人税の仕組み・役員報酬の設定・経費活用・役員退職金・消費税・決算対策まで、法人ならではの節税戦略を網羅しています。

法人の節税は「減る」と「先送り」を分けて考える

法人の節税策には、税金が本当に減るものと、いまは減るが将来まとめて戻ってくるものの2種類があります。この区別をせずに「節税できた」と考えると、数年後に解約益や売却益が一気に立って、かえって高い税率で課税されることがあります。

2種類の違い

恒久的に減るもの=役員報酬・社宅・出張日当・交際費・役員退職金。支出や所得の付け替えがそのまま終わります。
繰延べ(先送り)=経営セーフティ共済・少額減価償却の特例・短期前払費用・中古資産の減価償却。解約や売却のときに益金が立つので、出口をどうするかまで決めてから使います。

やること年間の効果(法人税等)効果の種類注意点
役員退職金(勤続25年・3,000万円) 法人 約990万円
個人の負担 約250万円
恒久的に減る 生涯1回。功績倍率(2〜3倍)を超える部分は損金不算入
交際費の800万円枠(使い切った場合) 約264万円 恒久的に減る 中小法人(資本金1億円以下)のみ。実際の支出が要る
役員報酬の最適化(利益1,500万円のケース) 約160万円 恒久的に減る 社会保険料の増加分は別途。期首3か月以内に決める
経営セーフティ共済(月20万円・年240万円) 約79万円 繰延べ 解約手当金は全額益金。赤字の期や退職金を出す期に解約する
社宅の活用(家賃16万円分を法人負担) 約63万円 恒久的に減る 賃料相当額の計算を誤ると役員給与として課税される
少額減価償却の特例(年300万円まで) 約99万円 繰延べ 本来数年で落ちる費用の前倒し。2026年4月以後の取得は40万円未満まで
出張日当(5,000円×100日) 約16.5万円 恒久的に減る 受け取る個人側も非課税。旅費規程の整備が前提

※ 中小法人・課税所得800万円超の部分に実効税率33%を適用した概算です。実際の効果は所得区分・自治体・事業年度によって変わります。

順番の考え方:①まず役員報酬の設定(期首3か月以内にしか決められないので、機会が年1回しかない)②次に社宅・日当・交際費など恒久的に減るもの ③繰延べ型は出口とセットで。とくに経営セーフティ共済は、役員退職金を出す期に解約して益金と損金をぶつけるのが定石です。

法人税の仕組みと税率

法人が支払う税金は「法人税」だけではありません。令和8年度は、法人税・地方法人税・防衛特別法人税(国税)に加えて、法人住民税・法人事業税(+特別法人事業税)の6つが利益にかかります。中小法人は年800万円以下の所得に軽減税率15%が使えるため、実際に1年で払う税額は所得800万円でも所得の24.5%です。よく引用される「約33.6%」は、年800万円を超えた部分にだけかかる実効税率で、所得全体の平均ではありません。まずはこの構造を押さえることが法人節税の出発点です。

法人の利益にかかる税金の全体像(中小法人・標準税率)
法人税(国税) 800万円以下 15%/800万円超 23.2%
地方法人税(国税) 法人税額 × 10.3%
法人住民税 法人税額 × 7.0% + 均等割(最低7万円)
法人事業税+特別法人事業税 所得 × 3.5〜7.0% + 所得割 × 37%
合計負担の目安 課税所得1,000万円なら約27%(下の計算例参照)

令和8年度・利益にかかる6つの税金(中小法人・東京都23区)

税目税率押さえておくこと
法人税(国税)年800万円以下 15%
年800万円超 23.2%
15%は特例で、令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象。所得が年10億円を超える事業年度は800万円以下の部分も17%[国税庁 No.5759]
地方法人税(国税)法人税額 × 10.3%所得ではなく法人税額にかかる。法人税と一緒に税務署へ申告・納付[国税庁]
防衛特別法人税(国税)(基準法人税額 − 年500万円)× 4%令和8年4月1日以後に開始する事業年度から。基礎控除が年500万円あるため法人税額500万円以下なら税額はゼロ。ゼロでも申告(零申告)が必要[国税庁]
法人住民税 法人税割法人税額 × 7.0%(標準)
超過税率 10.4%
東京都は超過課税を行っているが、資本金1億円以下かつ法人税額が年1,000万円以下なら標準の7.0%。中小法人の大半はこちら[東京都主税局]
法人住民税 均等割年 7万円資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の場合(都道府県分2万円+市町村分5万円)。赤字でもかかる[総務省]
法人事業税 所得割年400万円以下 3.5%
400万円超800万円以下 5.3%
800万円超 7.0%
東京都・資本金1億円以下の普通法人の標準税率。翌期に損金算入できる唯一の税目[東京都主税局]
特別法人事業税(国税)基準法人所得割額 × 37%事業税の所得割に上乗せされ、事業税と一緒に都道府県が徴収する。計算には標準税率で出した所得割額を使う[東京都主税局]
実効税率の数字が3つ出回っている理由

29.74%(財務省)は、資本金1億円超の大法人の数字です。国際比較のために公表されている率で、外形標準課税法人は所得割が1.0%しかないため、所得割7.0%が乗る中小法人とは別物です。防衛特別法人税の対象になる場合は30.64%とされています[財務省]。

約33.6%は、中小法人の「年800万円を超えた部分」にかかる率です。上の表の税率から計算した値で、所得全体の平均負担率ではありません。年800万円以下の部分だけなら同じ計算で約21.4%になります。

実際にその年に払う税額の割合は24〜30%です。下の試算のとおり、所得400万円で24.1%、800万円で24.5%、1,500万円で30.2%です。実効税率は翌期の事業税の損金算入を織り込んだ率なので、この「その年の納税額÷所得」とは定義が違います。両方の数字が併存していても矛盾ではありません。所得別の内訳は法人税の実効税率は利益いくらで何%かで詳しく見ています。

東京都23区の中小法人が実際に払う税額(所得別)

上の表の税率を使って、所得400万円・800万円・1,500万円の3つで1年分の税額を積み上げたものです。本サイトの試算で、公的機関が公表している数字ではありません。

税目所得400万円所得800万円所得1,500万円
法人税600,000円1,200,000円2,824,000円
地方法人税(10.3%)61,800円123,600円290,872円
防衛特別法人税(4%・基礎控除500万円)0円0円0円
法人事業税(所得割)140,000円352,000円842,000円
特別法人事業税(37%)51,800円130,240円311,540円
法人住民税 法人税割(7.0%)42,000円84,000円197,680円
法人住民税 均等割70,000円70,000円70,000円
合計965,600円1,959,840円4,536,092円
所得に対する割合24.1%24.5%30.2%
(均等割を除いた割合)22.4%23.6%29.8%

試算の前提:東京都23区内に事務所1か所のみ、資本金1,000万円、従業者50人以下、令和8年4月1日以後に開始する事業年度。利益=法人税の課税所得とみなし、法人住民税・法人事業税はいずれも標準税率。繰越欠損金・税額控除・前期の事業税の損金算入・中間納付・申告書上の端数処理は考慮していません。税率の出典は上の表のとおりです。赤字の年でも均等割7万円はかかります[東京都主税局]。均等割だけで会社が赤字でも出ていく金額は法人住民税の均等割は赤字でも年7万円にまとめています。

2026年4月から「防衛特別法人税」が始まっています

2026年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税額を基準に上乗せする防衛特別法人税が課されます。税額は「(基準法人税額 − 基礎控除500万円)× 4%」で、法人税額が年500万円以下の法人には実質的な負担が生じません。

自社が該当するかの目安。中小法人の税率(800万円以下15%・超23.2%)で法人税額が500万円になるのは、課税所得がおよそ2,440万円のときです。つまり課税所得が2,400万円前後を超えていなければ、防衛特別法人税の納税額はゼロになります。

ただし納税額がゼロでも申告書の提出は必要です。法人税の申告に合わせて防衛特別法人税の申告書もつくることになるため、「うちは関係ない」と思っていると申告漏れになります。初年度は3月決算なら令和9年3月期、12月決算なら令和9年12月期です。中間申告が始まるのは令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度からです[国税庁]。仕組みと影響は防衛増税の仕組みと手取りへの影響で詳しく解説しています。

個人事業主との実効税率の比較

個人事業主は所得税(最高45%)+住民税(10%)+国民健康保険で、高所得になるほど税負担が急増します。売上・所得が一定水準を超えたら、法人化(法人成り)による節税効果が出やすくなります。目安は所得が600〜800万円超のケースです。判断の詳細は法人化のタイミングを、社会保険料まで含めた設計はマイクロ法人と社会保険料を参照してください。

計算式(法人税の概算)
法人税 = 課税所得 × 税率(15% or 23.2%)

※ 課税所得 = 益金(収益)- 損金(費用・損失)。役員報酬・経費は損金として課税所得を下げます。

計算例:課税所得1,000万円の中小法人(東京都、標準税率)の税額
法人税(800万円 × 15% + 200万円 × 23.2%)1,664,000円
地方法人税(法人税額 × 10.3%)約171,000円
法人住民税(法人税額 × 7.0% + 均等割7万円)約186,000円
法人事業税+特別法人事業税(概算)約674,000円
防衛特別法人税(基礎控除500万円に届かず)0円
合計税負担約2,695,000円
税負担率約27%(800万円以下の部分に軽減税率が効く)
課税所得を800万円以下に抑えると軽減税率(15%)が最大限に適用され、税負担を抑えられます。

役員報酬の最適化

オーナー社長が役員報酬を受け取ることで、法人の課税所得を下げながら個人側の給与所得控除も活用できます。法人税と個人の所得税・住民税の合計を最小化する報酬額を設定することが重要です。最適額の考え方や社会保険料も含めた試算は役員報酬はいくらに設定するのが最適かで詳しく解説しています。

全額法人留保のケース
会社の利益
1,500万円
↓
法人税・住民税・事業税等
約454万円(負担率約30%)
↓
内部留保
約1,046万円
VS
役員報酬を活用するケース
会社の利益
1,500万円
↓ 役員報酬800万円を損金に
法人課税所得
700万円 → 法人税等約171万円
↓ 個人は給与所得控除が使える
法人税+個人税の合計
大幅に圧縮
役員報酬の「定期同額給与」ルール

役員報酬を損金(経費)にするには、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定し、毎月同額を支払う必要があります(定期同額給与)。年途中で理由なく変更すると変更分が損金不算入になります。

報酬額と税率の目安(独身・社会保険含む)

役員報酬(年収)給与所得控除所得税+住民税の目安社会保険料(本人分)
400万円124万円約38万円約60万円
600万円164万円約76万円約80万円
800万円190万円約124万円約93万円
1,000万円195万円約182万円約105万円
1,200万円195万円約251万円約105万円

※ 概算値。配偶者控除・扶養控除などの状況により異なります。社会保険料の負担を抑える設計はマイクロ法人と社会保険料も参考にしてください。

最適化のポイント
最適報酬 = 法人税の節税額 ≧ 個人の追加税負担+社会保険料 となる水準

※ 一般的に年収800万〜1,000万円付近が、法人税と個人税の合計が最小になりやすい水準とされます(状況により異なる)。

計算例:利益1,500万円の会社・役員報酬800万円に設定した場合
役員報酬前の利益15,000,000円
役員報酬(損金)− 8,000,000円
法人の課税所得7,000,000円
法人税等(法人税・地方法人税・住民税・事業税等)約1,710,000円
個人の所得税+住民税約1,240,000円
法人+個人の合計税負担約2,950,000円(全額留保なら約4,540,000円)
役員報酬を適切に設定することで、全額留保より 約160万円 税負担を抑えられる計算になります(社会保険料の増加分は別途考慮が必要)。

法人で経費にできるもの

法人は個人事業主よりも損金(経費)として認められる範囲が広いのが特徴です。社宅・日当・生命保険など、法人ならではの経費活用で課税所得を効果的に下げられます。

法人の主な損金(経費)
  • 役員報酬・給与・賞与
  • 社会保険料(会社負担分)
  • 事務所・店舗の家賃
  • 社宅の家賃(法人名義で借り上げ)
  • 出張日当(規程に基づく)
  • 交際費(中小法人は年800万円まで全額、または接待飲食費の50%)
  • 生命保険料(損金算入できる種類)
  • 車両費(社用車)
  • 減価償却費・修繕費
  • 税理士・弁護士費用
損金にならないもの(主な例)
  • 法人税・法人住民税(損金不算入)
  • 役員への賞与(事前確定届出なし)
  • 過大役員報酬(不相当に高額な部分)
  • オーナーの個人的な生活費
  • 寄附金(一定額を超える部分)
  • 交際費のうち損金枠を超える部分(資本金1億円超100億円以下は接待飲食費の50%まで、100億円超は全額が損金不算入)
  • 罰科金・交通反則金

法人ならではの3大経費活用

社宅の活用

法人名義で物件を借り、役員・従業員に賃料相当額の一定割合で転貸。法人は家賃全額を経費計上でき、個人の給与課税を最小化できます。

家賃20万円の物件 → 本人負担3〜5万円 → 法人が差額15〜17万円を経費に
出張日当

旅費規程を作成し、役員・従業員に出張日当を支給。受け取った日当は非課税(所得税なし)で、法人側は全額損金にできます。

役員日当5,000円 × 出張100日 = 50万円が非課税かつ全額損金
交際費の800万円枠

中小法人(資本金1億円以下)は年800万円まで全額損金にする方法と接待飲食費の50%まで損金にする方法の有利なほうを選べます。1人1万円以下の飲食費はそもそも交際費から除かれ、全額損金にできます。

年800万円の交際費 × 実効税率33% = 最大264万円の節税効果
交際費の2つのルールと、1人1万円の判定

中小法人は有利なほうを選べます。損金不算入になるのは、①交際費のうち年800万円(定額控除限度額)を超える部分 ②接待飲食費の50%を超える部分——このどちらかです。接待飲食費だけで年1,600万円を超えるような会社でなければ、①の800万円枠が有利になります[国税庁 No.5265]。

1人あたり1万円以下の飲食費は、そもそも交際費に入りません。令和6年4月1日以後に支出した分からの基準で、それ以前は5,000円以下でした。ただし役員・従業員とその親族だけの社内飲食費は除外の対象外で、1人1万円以下でも交際費に残ります。適用には、飲食した年月日・相手方の氏名と関係・参加人数・金額・店名と所在地などを記載した書類の保存が必要です。

1万円かどうかは、自社の消費税の経理方法で判定します。税抜経理なら税抜1万円(税込11,000円)まで、税込経理なら税込1万円までです。同じ店で同じ金額を使っても、会社によって使える上限が違います。

この特例は令和6年度税制改正で適用期限が3年延長されました(=令和9年3月31日までに開始する事業年度)[国税庁]。使い分けの実例は交際費800万円枠と1人1万円の飲食費で解説しています。

損金算入の基本原則
課税所得 = 益金(収益) − 損金(費用・損失)

※ 損金が増えるほど課税所得が下がり、法人税が減ります。ただし「事業に関係した支出」である必要があります。

計算例:社宅+日当の組み合わせで節税した場合
社宅(月16万円を法人経費に)× 12ヶ月1,920,000円
出張日当(5,000円×100日)500,000円
追加損金合計2,420,000円
節税効果(実効税率33%)約798,600円
社宅は役員個人の手取りを増やす効果もあります(家賃を法人負担にする分、役員報酬を下げられる)。

役員退職金の活用

役員退職金は法人にとって全額損金(経費)になり、受け取った役員側は退職所得として優遇税率が適用されます。生涯で最大の節税機会のひとつです。

退職金を受け取る
法人が役員退職金を支払う
→ 法人側は全額損金算入
→
退職所得控除を差し引く
勤続年数に応じた
大きな控除額を差し引く
→
÷2
2分の1課税
残った金額をさらに
半分にして課税所得を計算
→
所得税・住民税
大幅に圧縮された課税所得に
税率をかける

退職所得控除額の計算

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
勤続10年
400万円
勤続20年
800万円
勤続25年
1,150万円
勤続30年
1,500万円
勤続35年
1,850万円
計算式
退職所得 = (退職金 − 退職所得控除額) × 1/2

※ この退職所得に対して通常の所得税・住民税の税率をかけます。他の所得と分離して計算(分離課税)。

※ 役員等としての勤続年数が5年以下の場合、2分の1課税は適用されません(特定役員退職手当等)。

※ 功績倍率方式:退職時の役員報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(2〜3倍)が損金算入の目安。詳しい計算は退職金の税金の計算方法を参照。

計算例:勤続25年・退職金3,000万円を受け取った場合
退職金30,000,000円
退職所得控除(800万+70万×5年)− 11,500,000円
2分の1課税× 1/2
課税退職所得9,250,000円
所得税+住民税(概算)約2,500,000円
実質税負担率約8%(通常の給与なら30〜40%相当)
同じ3,000万円を給与として受け取ると税負担は約1,000万円超。退職金にすることで 700〜800万円の節税 になります。

消費税・インボイス制度

法人設立後2事業年度は原則として消費税が免税になります(資本金1,000万円未満の場合)。ただし設立時の資本金や特定期間の売上によっては、初年度から課税事業者になることがあります。

法人設立時の
資本金は?
1,000万円未満
↓
設立1期目・2期目は
原則 免税事業者
※ 特定期間(前事業年度の前半6ヶ月)の売上・給与が1,000万円超の場合は課税
1,000万円以上
↓
設立1期目から
課税事業者
消費税の申告・納付が必要

3期目以降の課税・免税の判定

判定基準内容判定に使う期間
基準期間の売上高1,000万円超 → 課税事業者2年前の事業年度
特定期間の売上・給与両方1,000万円超 → 課税事業者前事業年度の前半6ヶ月
インボイス登録登録すれば免税でも課税事業者に登録日以降
法人設立時のインボイス・消費税の判断ポイント
  • BtoB取引が多い場合:取引先がインボイス(適格請求書)を求めるケースが多いため、早期に登録を検討。
  • BtoC取引中心の場合:一般消費者は仕入税額控除を気にしないため、免税期間を最大限に活用できる。
  • 2割特例は「令和8年9月30日の属する課税期間」で終わります:免税事業者がインボイス登録を機に課税事業者になった場合に納税額を売上消費税の2割にできる特例で、対象は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です[国税庁 Q&A]。9月決算なら令和8年9月期、12月決算なら令和8年12月期が最後です。終了後の選択肢は2割特例はいつまで?終了後の対応で解説しています。
  • 3割特例は法人には使えません:2割特例の後継として令和8年度改正で創設された3割特例(令和9年分・令和10年分・納税額を売上消費税の3割に)は、個人事業者のみが対象です[国税庁]。法人は基準期間の課税売上高にかかわらず適用できないため、2割特例が終わったら本則課税か簡易課税のどちらかを選ぶことになります。事業年度の設計によって2割特例を使える期間が変わるので、決算期とあわせて早めに試算してください。
  • 2割特例の翌期なら、簡易課税の届出は申告期限まで待てます:簡易課税は本来、適用を受けようとする課税期間の開始日の前日までに届出が必要ですが、2割特例を使った翌課税期間から簡易課税にする場合は、その課税期間の申告期限までに出せば間に合います[国税庁]。1年分の実績を見てから決められるということです。

未登録事業者からの仕入れ 経過措置は2026年10月1日に80%→70%

インボイス発行事業者ではない相手からの課税仕入れでも、一定割合は仕入税額控除ができます。令和8年度改正でこの経過措置の期限が2年延長され、割合が「7・5・3割控除」に組み替えられました[国税庁]。免税事業者への外注が多い会社は、10月以降の原価の前提が変わります。

課税仕入れを行った日控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日30%
9月と10月をまたぐ取引は「支払った日」では決まりません

80%か70%かは、課税仕入れを行った日で判定します。役務の提供なら、原則として約した役務の全部が完了した日です。9月21日から受けていたサービスが10月20日に完了し、10月31日に支払った場合は70%で計算します[国税庁 Q&A 問113-3]。支払日で判断すると誤ります。

帳簿の記載も直します。経過措置を使う仕入れには「80%控除対象」などの記載が必要ですが、10月以降の分は「70%控除対象」に書き換えることになります。記号と凡例で示す方法でも構いません。

上限額が10億円から1億円に下がります。1つの未登録事業者からの課税仕入れの合計(税込)がその事業年度で1億円を超えると、超えた部分には経過措置を使えません。令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

消費税の計算式(本則課税)
納税額 = 売上にかかる消費税 − 仕入・経費にかかる消費税

※ 簡易課税(前々事業年度の課税売上5,000万円以下・要届出):納税額 = 売上消費税 × (1 − みなし仕入率)。選び方は簡易課税と本則課税の違いを参照。

計算例:設立2年目(免税)→ 3年目(課税)で売上2,200万円(税込)の場合
1・2期目(免税)の消費税負担0円
3期目以降・売上消費税(2,200万円 × 10/110)2,000,000円
仕入消費税(経費880万円 × 10/110)− 800,000円
納付消費税1,200,000円
免税期間中に設備投資や資金繰り準備をしておくと、3期目以降の消費税納付に備えられます。

決算対策・節税チェック

決算月が近づいたら、利益を圧縮できる手を打てるかどうか確認しましょう。決算の1〜3ヶ月前から動くことが重要です。決算日を過ぎると多くの対策は間に合いません。

決算3ヶ月前〜
利益・損金の確認と計画
  • 利益の着地予測を試算し、節税余地を把握する
  • 役員報酬変更の検討(改定は新事業年度開始から3ヶ月以内)
  • 小規模企業共済(役員個人の所得控除)の掛金増額申請
  • 経営セーフティ共済(掛金が損金)や生命保険の加入・増額検討
↓
決算1ヶ月前〜
費用の前倒し・資産の確認
  • 修繕費・消耗品の購入(使用する見込みがあるもの)
  • 広告宣伝費・外注費の前払い計上
  • 不良在庫・不良債権の評価損・貸倒処理
  • 40万円未満の備品購入(少額減価償却資産の特例・年間合計300万円まで。2026年3月31日以前の取得分は30万円未満)
  • 未払費用(給与・顧問料等)の計上漏れチェック
↓
決算月中
最終確認と経理処理
  • 役員賞与(事前確定届出給与)の支払い
  • 棚卸資産の実地棚卸・評価
  • 固定資産の減価償却費の計算
  • 貸付金・借入金の整理
  • 税理士と最終税額の試算・確認

繰越欠損金の活用

赤字は10年間繰り越せる

法人の赤字(欠損金)は最大10年間、翌年以降の利益から差し引くことができます(繰越控除)。設立初期の赤字は必ず申告して記録しておきましょう。また、前事業年度の黒字に当期の赤字を繰り戻して還付を受ける「繰戻還付」制度(中小法人のみ)もあります。

繰越欠損金の控除計算
当期の課税所得 = 当期の所得 − 繰越欠損金(最大10年分)

※ 中小法人は所得の100%まで控除可能(大企業は50%まで)。

計算例:前期赤字300万円・当期黒字800万円の場合
当期の所得8,000,000円
前期からの繰越欠損金− 3,000,000円
当期の課税所得5,000,000円
繰越控除なしの法人税(800万×15%)1,200,000円
繰越控除ありの法人税(500万×15%)750,000円
繰越欠損金による節税効果450,000円
赤字でも必ず法人税の申告をすること。申告しないと繰越欠損金が使えなくなります。

今日やること

今日やること

  1. 次の事業年度の開始日をカレンダーに入れる。役員報酬を変えられるのは期首から3か月以内だけで、機会は年に1回しかありません。ここを逃すと、利益がぶれても1年間なにもできなくなります。
  2. 繰延べ型の商品に「出口」があるか確認する。経営セーフティ共済や生命保険で積んでいる分は、解約したときに全額が益金になります。いつ・何とぶつけて解約するか(役員退職金を出す期、赤字の期)を決めていないなら、いまの残高と加入年月を書き出してください。
  3. 免税事業者への外注があるなら、10月1日をまたぐ取引を洗い出す。未登録事業者からの仕入れで控除できる割合が、2026年10月1日から80%→70%に下がります。判定は支払日ではなく課税仕入れを行った日なので、9月中に受注して10月に納品・支払いとなる案件は70%です。帳簿の「80%控除対象」の記載も直す必要があります。
  4. 課税所得が2,400万円を超えそうか見積もる。超えると2026年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税がかかります。超えなくても申告書の提出は必要なので、顧問税理士がいる場合は対応を確認しておきましょう。

よくある質問

法人化(法人成り)の目安は?

一般に所得が600〜800万円を超えると、法人税の実効税率(中小法人で約23〜34%)が個人の所得税・住民税の合計より有利になりやすく、役員報酬による給与所得控除も使えます。社会保険の負担や設立・維持コストも含めて総合判断します。

役員報酬はいつまでに決める?

損金にするには、事業年度開始から3か月以内に金額を決め、毎月同額を支払う「定期同額給与」が原則です。期中に理由なく変更すると変更分が損金不算入になります。

設立直後は消費税が免除される?

資本金1,000万円未満なら設立1・2期目は原則免税ですが、特定期間(前事業年度の前半6か月)の売上・給与が1,000万円超だと課税、インボイス登録をすれば免税でも課税事業者になります。

赤字の年も申告は必要?

必要です。欠損金は最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺できますが、申告していないと繰越控除が使えません。中小法人には前期の黒字に繰り戻して還付を受ける制度もあります。

防衛特別法人税で税負担は増える?

2026年4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から基礎控除500万円を差し引いた額の4%が上乗せされます。基礎控除があるため、法人税額が年500万円以下の中小法人には実質的な負担は生じません。中小法人の税率で法人税額が500万円になるのは課税所得がおよそ2,440万円のときなので、課税所得2,400万円前後までは納税額ゼロです。ただし納税額がゼロでも申告書の提出義務はあります。

「節税になる」と勧められた商品は、本当に節税ですか?

多くは繰延べ(先送り)です。経営セーフティ共済・生命保険・中古資産の減価償却・短期前払費用は、支払った期の損金にはなりますが、解約や売却のときに全額または一部が益金として戻ります。見分け方は「解約・売却したときにお金が戻ってくるか」。戻ってくるなら繰延べで、戻ってこないなら恒久的な節税です。繰延べ自体が悪いわけではなく、役員退職金を出す期や赤字の期にぶつけて解約すれば、実質的な節税に変えられます。出口を決めずに入るのが失敗のパターンです。

中小法人の税負担は、結局は所得の何%ですか?

東京都23区・資本金1,000万円・従業者50人以下の会社で計算すると、所得400万円で24.1%、800万円で24.5%、1,500万円で30.2%です(本サイト試算・均等割7万円を含む)。よく見る「約33.6%」は年800万円を超えた部分にかかる実効税率で、所得全体の平均ではありません。財務省が公表している29.74%は資本金1億円超の大法人の数字なので、中小法人には当てはまりません。

交際費は年800万円まで全額経費にできますか?

中小法人(資本金1億円以下)は「年800万円まで全額損金」と「接待飲食費の50%まで損金」の有利なほうを選べます。1人あたり1万円以下の飲食費はそもそも交際費から除かれますが、役員・従業員とその親族だけの社内飲食費は除外されず、交際費に残ります。1万円の判定は自社が税抜経理か税込経理かで変わります。この特例は令和6年度改正で3年延長され、令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象です。

免税事業者からの仕入れは、2026年10月から何%引けますか?

70%です。令和8年9月30日までは80%でした。令和8年度改正で期限が2年延長され、令和10年10月から50%、令和12年10月から令和13年9月末まで30%と下がります。割合は支払った日ではなく課税仕入れを行った日で判定するので、9月末と10月頭をまたぐ取引は注意してください。帳簿の「80%控除対象」という記載も、10月以降の分は「70%控除対象」に直します。

2割特例が終わったら、法人はどうすればいいですか?

法人は本則課税か簡易課税のどちらかを選ぶことになります。2割特例の後継として創設された3割特例(令和9年分・令和10年分)は個人事業者のみが対象で、法人は基準期間の課税売上高にかかわらず適用できません。簡易課税は前々事業年度の課税売上高5,000万円以下で、適用を受ける課税期間の開始日の前日までに届出が必要です。経費や仕入れが少ない業種ほど簡易課税が有利になりやすいので、決算期から逆算して早めに試算してください。

参照元・公式情報

本記事は以下の公式情報をもとに作成しています。制度は改正されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

※ 本記事の内容は情報提供を目的としており、税務・法務アドバイスではありません。個別の税務判断については、所轄の税務署または税理士にご相談ください。