2026年7月28日に発生した熊本地震では、発災翌日までに熊本県の10市10町1村に災害救助法が適用されました。住まいや家財が被害を受けたとき、公的な支援は「待っていれば届く」ものではなく、り災証明書の取得を入口に、自分で申請して受け取るものがほとんどです。この記事では、熊本地震をはじめ大きな災害のときに使える補助金・給付金・貸付・税や保険料の減免を、金額と手続きの順番がわかるように一次情報で整理します。被災地の方だけでなく、離れて暮らす家族が調べて教えてあげる用途でも使ってください。
すべての入口「り災証明書」——片付ける前に写真を撮る
支援金・応急修理・税の減免・保険金請求まで、ほとんどの制度で必要になるのが、市町村が住家の被害程度(全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊・一部損壊)を認定するり災証明書です。
- 片付け・修理の前に、被害の写真を撮る。建物の全景(四方向)、被害箇所の遠景と近景、浸水した場合は水の跡がわかる写真を、スマホで多めに残します。
- 市町村の窓口(多くは郵送・電子申請も可)でり災証明書を申請する。申請後、調査員による住家被害認定調査が行われます。
- 認定結果に納得できない場合は再調査を依頼できます。1次調査は外観中心のため、内部被害が大きいときは遠慮せず申し出てください。
発行までは時間がかかることがありますが、写真さえ残っていれば片付け・応急的な修理を先に進めて大丈夫です(生活再建を優先してください)。
住まいの応急修理(災害救助法)——半壊以上で70万6,000円以内
災害救助法が適用された市町村では、被災した住宅の屋根・壁・水回りなど日常生活に不可欠な部分の応急修理を、自治体が業者に依頼して行う制度があります(現金支給ではなく現物給付)。
- 費用の限度額の目安は半壊以上で1世帯70万6,000円以内、準半壊で34万3,000円以内(直近の基準額。年度により改定されます)。
- 自分で業者に依頼して修理した分は原則対象外です。制度を使うなら、必ず市町村の窓口を通してから修理してください。
- 応急修理を利用すると、応急仮設住宅(みなし仮設含む)とは原則併用できません。自宅に住み続けられる被害か、避難が必要かで選択が変わります。
- 今回の熊本地震では、内閣府の発表により熊本市・宇城市・八代市など10市10町1村が適用対象です(対象市町村は今後追加されることがあります)。
被災者生活再建支援金——最大300万円
住宅が大きな被害を受けた世帯には、被災者生活再建支援法にもとづく支援金が支給されます。「基礎支援金(被害程度に応じて)」と「加算支援金(再建方法に応じて)」の2階建てです。
| 区分 | 基礎支援金 | 加算支援金(建設・購入/補修/賃借) |
|---|---|---|
| 全壊(解体・長期避難含む) | 100万円 | 200万円/100万円/50万円 |
| 大規模半壊 | 50万円 | 200万円/100万円/50万円 |
| 中規模半壊 | — | 100万円/50万円/25万円 |
- 全壊世帯が住宅を建設・購入する場合で最大300万円。単身世帯は各金額の4分の3になります。
- 申請窓口は市町村。り災証明書と預金通帳の写しなどが必要で、基礎支援金は原則発災から13か月以内、加算支援金は37か月以内が申請期限です。
- 制度の適用は都道府県の公表で確定します。今回の地震での適用状況は、熊本県・お住まいの市町村の発表を確認してください。
そのほかの給付・貸付——義援金・弔慰金・援護資金
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 義援金の配分 | 日本赤十字社や県に寄せられた義援金が、配分委員会を通じて被害程度に応じて被災者に配分されます。受け取りに税金はかかりません。寄付する側の税制は熊本地震の義援金と寄附金控除で解説しています。 |
| 災害弔慰金 | 災害で亡くなった方の遺族に、生計維持者の死亡で500万円・その他の方で250万円を支給。 |
| 災害障害見舞金 | 災害による重度の障害に、生計維持者250万円・その他125万円を支給。 |
| 災害援護資金(貸付) | 負傷または住居・家財の損害を受けた世帯への貸付。限度額350万円・所得制限あり。給付ではなく借入なので返済計画に注意。 |
税金・保険料も軽くなる——雑損控除と申告期限の延長
- 雑損控除か災害減免法、有利な方を選べます。住宅や家財の損失は、①雑損控除(損失額に応じて所得から控除。引き切れない分は3年間繰り越し可)②災害減免法(その年の所得1,000万円以下で損失が住宅・家財の2分の1以上のとき、所得税を全額〜4分の1減免)のどちらかを選択します。損失が大きい年は雑損控除の繰り越しが有利になることが多いです。
- 申告・納付期限の延長。災害時は国税庁が地域を指定して申告・納付期限を自動延長するほか、個別申請でも延長できます。今回の地震に関する熊本国税局の発表を確認してください。
- 予定納税の減額申請・源泉所得税の徴収猶予も利用できます。
- 固定資産税・住民税・国民健康保険料などの地方税・保険料の減免は市町村ごとに条例で定められています。り災証明書を添えて申請します。
- 地震保険に加入している場合は、り災証明とは別に保険会社の損害調査で保険金が決まります。契約中の保険会社への連絡は早めに。
個人事業主・中小企業向けの支援
事業への被害には、個人の生活支援とは別の支援メニューがあります。経済産業省は発災翌日の7月29日に、被災中小企業・小規模事業者への支援措置を発表しました。
- 特別相談窓口:県内の商工会・商工会議所・よろず支援拠点・政府系金融機関に設置。まずここに相談を。
- 災害復旧貸付・セーフティネット保証4号:日本政策金融公庫などの災害復旧貸付や、信用保証枠の別枠化(保証4号)で運転資金・設備資金を確保できます。
- 既往債務の返済条件緩和:既存の借入の返済猶予・条件変更の相談に応じる措置です。
- 住宅ローンや事業ローンが残ったまま再建する場合は、自然災害債務整理ガイドライン(信用情報に登録されずにローン減免を協議できる制度)も検討してください。
- 設備や店舗の復旧では、今後「なりわい再建支援」などの補助金が措置される場合があります。県・中小企業庁の発表を継続的に確認しましょう。
便乗詐欺・悪質な修理勧誘に注意
災害後は「保険金で自己負担なく修理できます」という勧誘や、法外な料金のブルーシート張り・屋根修理の訪問営業が急増します。
- 「保険金が出るから実質無料」は典型的な勧誘文句です。保険金の請求は自分で(または保険会社経由で)でき、手数料を払う必要はありません。
- 応急修理制度を使うなら市町村経由が原則。その場で契約せず、見積もりを複数取ってください。通常のリフォームで使える補助金はリフォーム補助金2026まとめで解説しています。
- 公的機関を名乗って現金やキャッシュカードを求める電話・訪問は詐欺です。義援金詐欺への注意は義援金の記事にもまとめています。
今日やること
- 片付けの前に、建物の四方向と被害箇所の写真をスマホで撮って残す(クラウドにも保存)。
- 市町村の窓口・公式サイトで「り災証明書の申請方法」と「応急修理制度の受付状況」を確認する。
- 個人事業主・会社の方は、商工会・商工会議所の特別相談窓口に電話で相談の予約を入れる。
よくある質問
り災証明書はいつまでに申請すればいいですか?
申請期限は市町村ごとに定められ、災害から数か月〜半年程度とされることが一般的です。期限前でも記憶と証拠が新しいうちに、片付け前の写真を添えて早めに申請するのが確実です。写真があれば片付けや応急修理を先に進めても認定は受けられます。
支援金はいつ、どうやって受け取れますか?
被災者生活再建支援金は市町村窓口に申請し、都道府県を通じて口座に振り込まれます。基礎支援金は比較的早く、加算支援金は住宅の再建方法(建設・補修・賃借)が決まった段階で申請します。義援金の配分は配分委員会の決定後になるため、数か月単位の時間がかかることがあります。
賃貸住まいでも受けられる支援はありますか?
あります。家財の損失は雑損控除の対象ですし、住んでいた借家が全壊・大規模半壊などと認定されれば被災者生活再建支援金(賃借の加算支援金など)の対象になり得ます。義援金の配分も持ち家かどうかを問いません。まずはり災証明書を申請してください。
確定申告や納税の期限に間に合いそうにありません。
災害時は国税庁が地域指定で申告・納付期限を延長するほか、指定地域外でも「災害による申告、納付等の期限延長申請」を個別に出せば延長が認められます。地方税や社会保険料にも同様の猶予・減免制度があります。まずは税務署・市町村に被災の事情を伝えてください。
出典:内閣府「令和8年熊本地震に係る災害救助法の適用について」・防災情報ページ、熊本県公式サイト、公益財団法人都道府県センター「被災者生活再建支援事業」、国税庁「災害関連情報」・タックスアンサー(雑損控除・災害減免法・期限の延長)、経済産業省「令和8年熊本地震に伴う被災中小企業・小規模事業者支援措置」(2026年7月29日時点)。支援制度の適用範囲・基準額・期限は今後の発表で変わります。申請前に必ず市町村・県・各省庁の最新情報を確認してください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は各窓口・専門家にご相談ください。







