国の補助金は、実際のところ「誰に」「いくら」渡っているのでしょうか。当サイトの補助金採択データベースに収録した107万2,177件・約36.6万社・金額判明分の総額228.7兆円(gBizINFO・行政事業レビュー・各補助金事務局の公表データを統合)を集計すると、「博報堂に7兆円」の本当の意味から、7つの補助金を使いこなす町工場まで、ニュースだけでは見えない構図が浮かび上がります。
金額トップ10の顔ぶれは「企業」ではなく「お金の通り道」
まず、収録データを受け取り手ごとに合計した金額ランキングです。
| 順位 | 受け取り手 | 累計額 | その正体 |
|---|---|---|---|
| 1 | 全国健康保険協会 | 12.5兆円 | 協会けんぽへの医療保険給付費の国庫負担 |
| 2 | 東京都 | 10.7兆円 | 地方創生臨時交付金・コロナ対応など国から都への交付 |
| 3 | NEDO | 10.5兆円 | グリーンイノベーション基金・先端半導体の生産拠点確保などの基金造成 |
| 4 | 株式会社博報堂 | 7.3兆円 | 電気・ガス料金補助や住宅支援事業などの事務局(後述) |
| 5 | 大阪府 | 6.8兆円 | 臨時交付金など |
| 6 | 中小企業基盤整備機構 | 6.3兆円 | 事業再構築促進事業の基金・コロナ利子補給など |
| 7 | 北海道 | 5.6兆円 | 交付金・災害復旧など |
| 8 | 日本私立学校振興・共済事業団 | 5.5兆円 | 私立大学等経常費補助の配分機関 |
| 9 | キャッシュレス推進協議会 | 5.4兆円 | マイナポイント第2弾の原資・事務経費 |
| 10 | 愛知県 | 4.6兆円 | 交付金など |
上位は民間企業がほとんど登場しません。健康保険の国庫負担、都道府県への交付金、基金をつくる国立研究開発法人——つまり国の予算が次の受け皿へ流れる「通り道」が金額の大半を占めます。
「博報堂に7兆円」の読み方
SNSで何度も話題になった「広告代理店に7兆円」ですが、データの中身を見ると41件の交付の大半は電気・ガス価格激変緩和対策事業(2023〜2025年度)の事務局分です。この7兆円には、全国の家庭や企業の電気・ガス料金から値引きされた補助の原資そのものが含まれています。電力・ガス会社に配る値引き原資が、いったん事務局を経由するためにこの数字になります(同様に、ガソリン補助ではENEOS 1.4兆円・出光興産0.9兆円など元売り各社が並びますが、これも店頭価格の値引き原資です)。事務局の運営経費と補助の原資は別物であり、「7兆円が広告代理店の収入になった」わけではありません。一方で、巨額の国費がどの民間企業を経由して流れているかが法人単位で確認できること自体が、このデータの価値だと考えています。
「事業会社そのもの」への大型補助はどこへ?
通り道ではなく、自社の設備投資などのために大型の補助を受けた企業を見ると、顔ぶれが変わります。象徴的なのが2024年開始の大規模成長投資補助金(上限50億円)です。交付決定179社のうち、上限の50億円に到達したのはサーパス工業、オティックスホールディングス、アサヒフォージ、ナミックス、アオイ電子など、半導体部材や自動車部品を手がける地方の中堅メーカーでした。1社あたりの平均補助額も約13.6億円(金額判明151社)と、中小企業向け補助金とは桁が2つ違います。
また、ラピダスへの先端半導体支援などはNEDOの基金経由のため、企業名ではなくNEDOの金額(10.5兆円)に含まれている点も、ランキングを読むうえでの注意点です。
件数で見ると主役は中小企業:IT導入21万件・持続化8.8万件
金額ではなく件数で集計すると、補助金の主役は一気に中小企業・小規模事業者になります。
| 補助金(事務局公表分) | 収録件数 |
|---|---|
| IT導入補助金(2017〜2025年の全年度) | 214,337件 |
| 小規模事業者持続化補助金(一般型・低感染・コロナ特別対応型) | 87,987件 |
| 事業再構築補助金(第1〜13回) | 66,650件 |
| ものづくり補助金 | 42,208件 |
| 経営継続補助金(農林水産省・法人分) | 11,249件 |
| 省力化投資補助金(カタログ型・一般型) | 10,397件 |
「補助金の常連」は9,910社
法人番号で名寄せすると、3種類以上の補助金の採択・交付決定一覧に登場する企業は9,910社ありました。最多クラスでは、ものづくり・IT導入・持続化・事業再構築・省力化・新事業進出など7種類の一覧に名前がある企業(食品製造の有限会社アップルフードなど)も存在します。制度をまたいだ活用は珍しいことではなく、設備投資・販路開拓・デジタル化と、フェーズごとに合う補助金を使い分けるのが定石になっていることがデータからも読み取れます。
データを読むときの注意点
- 金額が公表されない補助金が多い:ものづくり・IT導入・持続化・事業再構築などは採択の事実のみ公表され、交付額は非公表です。総額228.7兆円は「金額が判明している分」の合計です
- 同じ交付が複数の出典に載ることがある:gBizINFOと事務局公表の両方に同じ企業が載る場合があります(データベース上は出典ごとに区別して表示)
- 出典側の誤りもある:行政事業レビューの公開データには単位の入力ミス(円を百万円欄に入力し100万倍になっている等)が実在します。当データベースでは明らかな異常値を検知した場合、金額を非表示にする運用にしています
データベースの使い方
補助金採択データベースでは、企業名・補助金名から107万件を無料で検索できます。取引先や競合がどの補助金をいくら受けているかの確認、自社が申請したい補助金の採択実績調べ、営業先のリスト作りなどにご活用ください。補助金制度の全体像や申請の基本は補助金・助成金ガイドで解説しています。
今日やること
- 補助金採択データベースで自社名・取引先名を検索してみる
- 同業種の採択企業がどの補助金を使っているかを3つ書き出す
- 使えそうな補助金の次回公募スケジュールを確認してカレンダーに入れる
ほかのアクションは手取りアップ・アクションリストへ。
よくある質問
Q. 博報堂は本当に7兆円を受け取ったのですか?
A. 交付決定額の累計としては事実ですが、その大半は電気・ガス料金補助の事務局として経由した「国民への値引き原資」であり、同社の収入ではありません。事務局の運営経費は原資とは別に管理されています。公表データからは原資と経費の内訳までは分からないため、当データベースでは交付決定額をそのまま収録し、出典を明示しています。
Q. 補助金を一番多く受けている「普通の会社」はどこですか?
A. 設備投資型の大型補助では、大規模成長投資補助金で上限50億円の交付が決定したサーパス工業・オティックスホールディングス・アサヒフォージ・ナミックス・アオイ電子などの中堅メーカーが目立ちます。件数ベースでは、複数の中小企業向け補助金を使い分ける企業が多数あり、3制度以上の採択実績を持つ企業は9,910社に上ります。
Q. このデータはどこから来ていますか?
A. 経済産業省のgBizINFO、行政事業レビュー(RSシステム)の支出先情報、ものづくり・IT導入・持続化・事業再構築・省力化投資など各補助金事務局の採択者・交付決定公表、都道府県の産業振興機関の公表資料を統合したものです。個人・個人事業主は含まれません。
Q. 自分の会社も検索すると出てきますか?
A. 法人として上記の補助金に採択・交付決定された実績があれば、原則として公表データに基づき掲載されています。掲載情報はすべて各府省・事務局が公表している一次情報の転載であり、非公開情報は含まれていません。
- 補助金採択データベース(当サイト・集計は2026年7月24日時点)
- gBizINFO(経済産業省)
- 行政事業レビュー見える化サイト(RSシステム)
- 中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金(経済産業省)
※ 金額・件数は公表データの集計値であり、各制度の実際の予算規模・支払額とは異なる場合があります。本記事は情報提供であり、特定の企業・団体を批判または推奨するものではありません。







